「床の間」って、何のためにあるの? 侍と“もてなし”の空間
和室にある「床の間」。
今では、飾り棚のような存在に見えるかもしれませんが、
もともとは、とても意味のある場所でした。
床の間が生まれた背景には、武家文化があります。
室町時代、書院造の広まりとともに、床の間は整えられていきました。
当初は、武将や侍が主君から賜った書や刀、仏画などを安置する
格式を示す場として使われていたと言われています。
やがて床の間は、
「家の格式」や「主人の心構え」を表す場所へと変化していきます。
掛け軸や花を飾ることで、
季節感や思想、もてなしの心を客人に伝える。
床の間は、言葉を使わずに気持ちを表す空間だったのです。
また、床の間の前は「上座」とされ、
主人は決して床の間を背にして座りませんでした。
これは、客人を敬い、自分は一段控えるという
日本独特の礼の文化を表しています。
床の間は、単なる飾りではなく、
人と人との関係性を整えるための装置でもありました。
大工の立場から見ると、床の間は
家の中でも特に神経を使う場所です。
床柱一本、框の納まりひとつで、
空間全体の印象が大きく変わります。
あえて節のある木、少し曲がりのある木を選ぶこともあり、
自然の美しさをどう活かすかは、職人の腕の見せどころでした。
現代の暮らしでは、
床の間を使いこなせていないという声も多く聞きます。
しかし、本来の床の間は
「何かをたくさん置く場所」ではありません。
余白をつくり、心を整えるための空間です。
床の間があることで、
部屋の空気が少し引き締まり、
日常の中に静かな緊張感が生まれる。
それもまた、日本の住まいが大切にしてきた価値のひとつです。
私たち大工は、
床の間を「昔のもの」として残すのではなく、
今の暮らしにどう馴染ませるかを考えながら、
この空間と向き合っています。
床の間は、今もなお、
住まいに奥行きを与えてくれる存在なのです。
