職人クリップ

【大工四方山話】その12

2026.05.28
【大工四方山話】その12

 

和室のあの柱、なんで一本だけ違うの?

 

床の間に立つ一本の柱、
それが「床柱」です。

和室に馴染みのある方でも、
床柱を意識して見たことがある方は、
意外と少ないかもしれません。

床柱は、家の中でも特別な意味を持つ柱です。
構造を支える柱というより、
その空間の“顔”をつくる存在と言えます。

不思議なことに、
床柱には、真っ直ぐで整った木ばかりが使われるわけではありません。
むしろ、少し曲がった木や、節のある木、
皮付きの丸太が選ばれることもあります。

それは、木が本来持っている姿を活かすためです。
人工的に整えすぎない自然の形に、
日本人は美しさを見出してきました。

床の間は、客人を迎える場所。
そこに立つ床柱は、
家の主人の美意識や心配りを静かに表します。

大工にとって床柱は、
ただ立てればよい柱ではありません。
木目の向き、節の位置、曲がり具合、
どの面を正面に見せるかまで考えます。

一本の木をどう見せるか。
そこには、技術だけでなく、
木を読む感覚と経験が必要です。

華やかに飾るのではなく、
さりげなく自然を取り入れる。
床柱には、日本の住まいが大切にしてきた
静かな美意識が込められています。

何気なく目にしている柱にも、
実は大工のこだわりと、
長く受け継がれてきた考え方が息づいているのです。

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